1: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 00:56:26
「さっさと起きてくださーい。それとも、人類最後のマスターから寝るのが仕事の人に転職するつもりなんですかぁ?」
…いつから眠っていたのだろう。前後の記憶が、まるではっきりとしない。だが、自分に気だるげな声をかけている彼女が誰なのかは、すぐに思い出せた。
「…カーマ…?」
「はーい。ダメダメマスターさんの不肖のサーヴァントのカーマちゃんですよー。待つのに飽きて矢の一本でも撃っちゃおうかなーって思ってました」
さらっと物騒なことを言っているが、まあいつものことだ。そんな彼女を宥めながら状況を確認するのも、もう一種の習慣と化していた。
「何かふわふわする…どうしてここにいるのか、全然思い出せないんだ。いつもみたいに、また夢の中?」
問いかけられた彼女の眉間に、露骨に皺が寄った。何故だろうか。質問されたくないことを訊かれたというのは伝わってくるが。
「…はぁ…説明するのも嫌です…
一度しか言いませんから、よく聞いてくださいね?こんなことをもう一度話したら、私きっと自己嫌悪で死んでしまいます」
心の準備をするように暫く間を置いて、不機嫌な彼女は訥々と推論を語りだした。
…いつから眠っていたのだろう。前後の記憶が、まるではっきりとしない。だが、自分に気だるげな声をかけている彼女が誰なのかは、すぐに思い出せた。
「…カーマ…?」
「はーい。ダメダメマスターさんの不肖のサーヴァントのカーマちゃんですよー。待つのに飽きて矢の一本でも撃っちゃおうかなーって思ってました」
さらっと物騒なことを言っているが、まあいつものことだ。そんな彼女を宥めながら状況を確認するのも、もう一種の習慣と化していた。
「何かふわふわする…どうしてここにいるのか、全然思い出せないんだ。いつもみたいに、また夢の中?」
問いかけられた彼女の眉間に、露骨に皺が寄った。何故だろうか。質問されたくないことを訊かれたというのは伝わってくるが。
「…はぁ…説明するのも嫌です…
一度しか言いませんから、よく聞いてくださいね?こんなことをもう一度話したら、私きっと自己嫌悪で死んでしまいます」
心の準備をするように暫く間を置いて、不機嫌な彼女は訥々と推論を語りだした。
2: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 00:57:06
「物語の世界…?」
「…なんですかその目は。もう話してあげませんよ」
「ごめん、それは困る」
「はぁ…だから嫌だったんです…
マスターさんがさっきから感じている違和感は、恐らくこの世界全体に魅了の魔術がかかっているからです。尤も私や他のサーヴァントが使うような強力なものではないですが。まあ、雰囲気にあてられる程度のようなものです。
私が昔やった手口にも似ていますかね?今回の場合は、性格と一致する立ち位置や属性を持つ登場人物の役に据えることで、サーヴァントを物語の世界に再召喚、拘束しているようですが。召喚の時に狂化を付与することだってできるわけですから、魅了の魔術をかけることも容易いでしょう。
これ、準備さえちゃんとやれば結構簡単なんですよ?直接攻撃したり洗脳したりするわけじゃないので、面白いくらい無抵抗なんですよねぇ、みんな。
ですから、きっと他の人たちは使い物になりませんよ?本当、愛って最高ですよね?」
…また、随分と大味な世界に迷いこんだものだ。
だが、一番大切なことは解らないままだった。それを訊かないことには、どうすることもできない。
「どうやったら抜け出せるんだろう」
「…なんですかその目は。もう話してあげませんよ」
「ごめん、それは困る」
「はぁ…だから嫌だったんです…
マスターさんがさっきから感じている違和感は、恐らくこの世界全体に魅了の魔術がかかっているからです。尤も私や他のサーヴァントが使うような強力なものではないですが。まあ、雰囲気にあてられる程度のようなものです。
私が昔やった手口にも似ていますかね?今回の場合は、性格と一致する立ち位置や属性を持つ登場人物の役に据えることで、サーヴァントを物語の世界に再召喚、拘束しているようですが。召喚の時に狂化を付与することだってできるわけですから、魅了の魔術をかけることも容易いでしょう。
これ、準備さえちゃんとやれば結構簡単なんですよ?直接攻撃したり洗脳したりするわけじゃないので、面白いくらい無抵抗なんですよねぇ、みんな。
ですから、きっと他の人たちは使い物になりませんよ?本当、愛って最高ですよね?」
…また、随分と大味な世界に迷いこんだものだ。
だが、一番大切なことは解らないままだった。それを訊かないことには、どうすることもできない。
「どうやったら抜け出せるんだろう」
3: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 00:57:31
憮然とした彼女の目元が、嘲るように吊り上がった。
「考えて分かりませんか?
恋愛物の話の落ちなんて、考えるのも馬鹿馬鹿しいくらい決まりきったことじゃないですか。現実逃避のために飽きもせず何千年と積み上げた頭の悪ぅい妄想の書き起こしなんて、見る気も起きませんけど。
主人公のマスターさんと、ヒロインの女の子は、互いの愛を告白してハッピーエンド〜!こうして愛し合う二人は、めでたく幸せなカップルとなったのです〜!
…はぁ、ほんと死ねばいいのに」
吐き捨てるようなその言葉で、漸く合点がいった。今まで自分が突っ伏して眠っていたものが、実によく慣れ親しんでいたものだったからだ。
机と椅子が教室の中に整然と並べられている、あまりにもありふれた懐かしい光景。たったひとつ、自身の知っているそれとの相違点を挙げるとするなら、制服姿の生徒や出席簿を小脇に抱えた教師たちが、この光景から離れてから出会った人々であることだが──
「考えて分かりませんか?
恋愛物の話の落ちなんて、考えるのも馬鹿馬鹿しいくらい決まりきったことじゃないですか。現実逃避のために飽きもせず何千年と積み上げた頭の悪ぅい妄想の書き起こしなんて、見る気も起きませんけど。
主人公のマスターさんと、ヒロインの女の子は、互いの愛を告白してハッピーエンド〜!こうして愛し合う二人は、めでたく幸せなカップルとなったのです〜!
…はぁ、ほんと死ねばいいのに」
吐き捨てるようなその言葉で、漸く合点がいった。今まで自分が突っ伏して眠っていたものが、実によく慣れ親しんでいたものだったからだ。
机と椅子が教室の中に整然と並べられている、あまりにもありふれた懐かしい光景。たったひとつ、自身の知っているそれとの相違点を挙げるとするなら、制服姿の生徒や出席簿を小脇に抱えた教師たちが、この光景から離れてから出会った人々であることだが──
5: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 00:59:01
湖に落ちた虫は、こんな気分を味わいながら死んでいくのだろうか。
どこを見渡しても、四方八方私の嫌いな物だらけ。毒の沼にでも放り込まれた方が、まだましだったろう。
正直、こんなところには一秒だっていたくはないけれど、自分しかまともに動けるサーヴァントがいない以上、そうも言っていられない。正気を保ててしまうことにも、ほとほと嫌気が差すけれど。もうあのお馬鹿なマスターが、さっさと終劇まで進めてくれることを祈るしかない。
どこを見渡しても、四方八方私の嫌いな物だらけ。毒の沼にでも放り込まれた方が、まだましだったろう。
正直、こんなところには一秒だっていたくはないけれど、自分しかまともに動けるサーヴァントがいない以上、そうも言っていられない。正気を保ててしまうことにも、ほとほと嫌気が差すけれど。もうあのお馬鹿なマスターが、さっさと終劇まで進めてくれることを祈るしかない。
それか、あるいは──
彼がこの満ち満ちる愛と言う名の毒に溺れるというのなら、それはそれは面白そうだ。
そうだ、もしそうなったら──
──私が全霊で後押ししてあげますから、どうか惨めな断末魔を聞かせてくださいね?
9: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:25:40
今のところ毎週土曜の夜に順次更新していく予定です
7: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:11:32
可愛いなあ
8: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:14:53
黒桜で後輩か…絶対めんどくさいやつだ
10: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:31:01
いい…更新楽しみにしてる
11: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:36:56
私はいいと思う
12: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:40:14
吾も
13: この世全ての名無し 2020/07/26(日) 01:41:02
みんな恋愛脳になるのか…
ひっ ときめきカルデアス